3週間の業務を約5日間へ。非定型AI-OCRで 庁内DXを加速し、仕分けから読み取りまで一連の自動化を実現。
効果
・処理リードタイムが3週間から約5日間に短縮
・AIが書類の内容を理解し、高精度に仕分けとデータ化を実現
・職員の負担を軽減し、本質的な業務へ注力
ーご担当者様
稲垣様(情報システム化DX推進グループ)和賀様(情報システム化DX推進グループ)
—所属部署や業務内容について教えてください。
稲垣様:情報システム化DX推進グループに所属しています。令和4年度にDX推進グループが設立されて以来、社会課題の解決に向けて横断的にデジタル化を進めております。取り組み例としましては、救急搬送時間の短縮、子育て一時預かり先検索アプリの導入、AIによる水路監視と自動通知の導入、ローカル5G×AIの実証、地球観測衛星とAI活用した水道管維持管理の効率化など、外部企業と連携して多岐にわたる業務を推進しています。
—AI-OCRの活用を検討し始めた背景を教えてください。
稲垣様:発端は生成AIの登場です。RPAで業務の自動化は進みましたが、現場には紙の書類が根強く残っています。更に、同じ「請求関連書類」でも、請求書・納品書・支出票のように部門や取引先ごとに書式が異なる帳票が混在します。入力業務を含めた効率化を実現するには、どの帳票でも安定してデータ化できないと、一連の自動化が途切れてしまいます。そこで、レイアウトに依存せず、内容で読み取れるソリューションを探し始めました。
—非定型帳票へのAI-OCRの対応力について、どのように見極めましたか?
稲垣様:生成AIの広がりで、非定型でもある程度は読めるという情報を目にする機会が増えてきていたため、まずは複数のAI-OCRを手元で試しました。しかし、帳票の種類や細かな書式差があると、同じ項目でも抽出結果が揺れ、実務レベルには適用しませんでした。その折にリチェルカさんに出会い、複数の生成AIモデルの組み合わせやカスタマイズなど、具体的な方法を伴う提案を多数いただきました。RECERQA Scanは、レイアウトの位置ではなく記載内容を理解して分類・抽出する設計が明確であるため、書式差に左右されず、書式のばらつきをまたいで読み取りができることを確認できました。「非定型な帳票でもこれくらい読めるなら」と実務適用の見通しが立ったため、採用を決定しました。

—実際に、どのレベルまで読み取れていますか。
稲垣様:まずは請求書・納品書・支出票のような一般的ではあるものの書式が揃わない帳票において、項目名と数値を安定して抽出できています。加えて、細い罫線で区切られた検査調書や複雑な表形式でも、セル単位で項目と数値を取り違えずに認識可能です。罫線や表の密度が高い帳票ほど、人の目では見落としや転記ミスが起きやすいですが、そこを同じ基準で正しく拾える点は大きなメリットです。


【手書き文字、印鑑の日付、チェック項目も高精度に読み取り】

【複雑な表形式の検査調書や申請書も高精度に読み取り】
さらに出張時の宿泊旅費の精算では、朝食代が宿泊料金に含まれているかを記載する必要がありますが、領収書や予約画面に「朝食付き」の明記がなくても、記載内容や周辺文脈から朝食の有無を推定することが可能です。項目の有無ではなく、内容を読んで判断している点が効いています。

— 書類はまとまって届くことが多いと思います。仕分けはどう変わりましたか。
稲垣様:会計書類の審査においては、請求書・納品書・検査調書・支出票など5〜6種類の書類を職員が1枚ずつ目視で判断し、それぞれの書類の内容について整合がとれているか確認する必要があります。RECERQA Scanの「AI仕分け」は、AIが単にレイアウトを見るだけでなく、文面の内容を理解して仕分けるため、帳票ごとに書式が混在している場合でも高精度に自動分類が可能です。その結果、後工程の抽出から登録までが一連で滞りなく進み、現場の確認工数を大きく減らすことが可能です。
—初期の手応えを踏まえて、他の業務でも横展開されたのですか。
稲垣様:当初は5種類の帳票でPoCを開始しましたが、読み取り精度が庁内で高く評価され、「自部署の書類でも試せないか」という声が相次ぎました。現在対応している土木部の「入札参加資格申請書」や保健所の「麻薬年間届」も、こうした自発的な横展開によって実現しています。
—具体的な効果を教えてください。
稲垣様:土木部の業務では、入札参加資格の申請書類を読み取ってデータ化する取り組みで、従来約3週間かかっていた処理が約5日間に短縮されました。機械がデータ化を安定して担えるようになった分、職員は最終の目視チェックや例外対応に集中できるようになりました。空いた時間を、他業務の効率化策を検討する時間に充てられるようになっています。
和賀様:「麻薬年間届」は、年に一度、薬局や医療機関(病院・診療所)が1年間の麻薬の受入・払出、および年度末の在庫量を保健所に届け出ることが法律で義務付けられており、この届け出の約8割が紙で電子化が困難な領域です。私が以前いた保健所では約200件の届出対象施設がありました。紙で受付していた麻薬年間届を電子化するにあたり、RECERQA Scanを使うことで、全て手入力する場合に比べ、作業時間を体感で約半分に短縮できました。

—他の自治体ではクラウドシステムの導入にハードルがあるケースも多いと聞きます。導入しやすい仕組みがあれば教えてください。
稲垣様:当庁にはシステム調達に関する基本的な考え方があり、「行政情報システム全体最適化計画」に則り調達を行っています。この計画の根幹には、IT化に関する「3原則」が存在します。
行政情報システム全体最適化計画の3原則より
この方針が、クラウドサービスを導入しやすい大きな理由です。
—実際にサービスを利用する際の手続きも、比較的円滑に進められるのでしょうか。
稲垣様:PoC段階では、プロジェクト内での判断により、庁内の承認は迅速に得られる体制を構築しています。更に、PoC後の「本格導入」の段階で、セキュリティ要件を詳細に精査する二段構えとしています。検証前から厳密な要件を適用すると何も試せなくなってしまうため、検証段階ではセキュリティ上問題とならないサンプルを使用し、スピードを確保しています。
—今後の展望について教えてください。
稲垣様:請求書・納品書・支出票といった汎用帳票での効果を標準フローとして定着させ、対象部署と帳票を段階的に拡大していく方針です。運用面では既存システムと連携し、申請フォームからアップロード、OCR処理、自動登録、そして最終確認までを、チェックレスに近い水準に引き上げていきたいと考えています。他の官公庁でもそのまま適用しやすい再現性を意識し、体制を整えていく方針です。今回の取り組みにより時間が創出され、さらに踏み込んだデジタル化への取り組みを検討する余裕が生まれました。
—最後に、今後リチェルカに期待することを教えてください。
稲垣様:定型・非定型を問わず、仕分けから読み取りまでを一連で実行できる点がRECERQA Scanの一押しのポイントです。今後は、読み取り難度の高い帳票の精度向上と、既存データとの突き合わせや照合機能の一層の強化に期待いたします。
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